
山口県・下関。街の中心に建つ築年数のあるマンションを、家族の新しい暮らしに向けてフルリノベーションした。
クライアントとの対話を重ねる中で見えてきたのは、「暮らしの中に緑を取り入れること」が、日々のリフレッシュや家族の健やかな循環につながる、という明確な軸だった。
90m2の広さを持ち、三方向に開口部のある住戸は、風や光に恵まれたポテンシャルを秘めていた。その特性を最大限に活かしつつ、さらに空気の質を保つために、ウール100%のカーペット、天然由来の塗料による塗り壁など、内装にはできる限り自然素材を用いた。湿度が保たれ、やわらかくフレッシュな空気が部屋を満たす、都市の中で呼吸するような住まいが目指された。
空間構成はあくまでシンプル。しかし、その中に意図的に配置した、特徴的な表情のキッチンやダイニングの大きなシャンデリアが、日常の風景に輝きを添える。静と動、余白と主役、その対比がこの住まいのリズムを生み出している。
家族は共働きの夫婦とふたりの子どもたち。個室を設けず、住まい全体をひとつの共有空間とすることで、互いの気配を感じ合える構成とした。その中に、広めの洗濯室やワークスペース、家族全員が集えるキッチンなどの居場所にそれぞれの個性と役割を与えた設計が息づく。
日が傾き、室内の植物の影が壁に落ちる頃、子どもたちの「ただいま」の声が響く。シャンデリアが灯ると、食卓を囲む家族の表情がやさしく照らされる。その風景こそが、この家が育てた「日常」の価値を物語っている。
山口下関市 / 家族4人 / 広さ90,25m2