STORY
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― どういう背景で〈NEWTRAL〉は生まれた?
徳永(写真右):私たち〈HIGH END〉の家づくりはアッパークラスのお客様が多く、大規模な邸宅やラグジュアリーで上質な住まいを手がけています。これまでの15年、携わった件数はプランニングも含めると1000戸にのぼるかな。
小田原(写真左):ゆとりあるモダンな住まい=価格が高いという固定概念が、みなさんにきっとありますよね。「ホテルやギャラリーのように洗練された佇まいはアッパークラスの暮らし」みたいな。住宅業界でも、手が届きやすいシンプル&モダンをコンセプトにしたリノベーションの選択肢がほとんどなくて、困っているお客様がいたのも事実。僕らがずっとやってきたモダンで質の高い仕様だとどうしても費用面で諦めざるを得ないお客様がいて、価格を落とす代わりに仕様や品質を妥協しないといけない、そうなると思い描いた理想とのギャップが起きてしまう…、とジレンマを抱えていました。
行き場を失ったお客様のために、また業界で見落とされているところに一石投じたい思いからも、今まで市場になかった価格帯でシンプル&モダンな住まいを提供したいと考えました。
徳永:確かにお客様から「HIGH ENDのように洗練された住まいを予算内で作れませんか?」とオファーが増えてきていたね。僕らにとってはチャレンジに近いプロジェクトで、新たなニーズを開拓する気概が強くて。一般市場でよく見るリノベーションがレッドオーシャンだとしたら、僕らは確実にブルーオーシャン。プロダクトアウトの感覚に近いかも。
小田原:こうして、HIGH ENDが得意とするシンプル&モダンで洗練された世界観を維持しつつ、幅広いお客様に向けたリノベーション住宅への想いを二人で共有しました。HIGH ENDのクオリティを継承し、価格を抑えるにはどうしたらいいか。これはなかなか難しいこと。でも長年積み上げてきた経験をもとに設計力、審美眼、アイデア、技術力を結集させてやっていこうと構想を巡らせました。これが〈NEWTRAL〉誕生の背景です。
― 価格帯を下げると上質さが失われる、と思いきや…。
小田原:NEWTRALを立ち上げるにあたり、一度考えをフラットにしてみたんです。まっさらな器に、自分たちの大事なものを一つひとつのせて整理しようと。そしたら、HIGH ENDで大切にしてきた良い動線、良い収納、良い照明など、[5つの原則]がまっさきに出てきました。結局、今までやってきた家づくりの考え方と変わらなかったし、僕らの世界観や本質は変えられないなと再確認。違うのは、一般的な価格帯で実現させること。そこは素材の選定、プランニングの創意工夫でカバーする我々の腕の見せどころです。
徳永:本当にそうだね。でも、僕の中では最後まで葛藤したよ。家の価格帯を下げるために素材選びや設計などを妥協するのは僕らのポリシーに反する。だから今までクオリティを下げずにやってきたし、新規ブランドとはいえ価格帯を落とすことに抗っていましたね(笑)。
小田原:家づくりが大きな買い物になるのは、どんなお客様にとっても同じこと。高いお金と時間をかけてつくる家に深く満足してもらえるように、我々もしっかり応えていきたい。
徳永:NEWTRALで価格帯を落としながら、それでいて上質な住まいをご提供できるのは、「素材を熟知している」という強みがあって。これまで質の高い素材・資材をたくさん見てきたので、膨大な資料の中から高級感を纏う素材や、上質なテクスチャーやニュアンスを持っている素材をしっかりと選び出すことができるんです。素材選びもそうですし、素材の組み合わせ、空間演出も然り。これはローコストの家づくりを中心に行ってきた会社にはないものかと思います。これまで培った審美眼と設計力こそが、NEWTRALの醍醐味です。
小田原:きちんとモノの良し悪しを見極めて、一つひとつの素材が住空間にどう作用するか。快適性にどう寄与するか。適材適所の判断力と選び抜く力も重要で、経験に裏打ちされたプランニングもNEWTRALの強みだと思います。
徳永:数年前に高級住宅のリノベーションを行ったんです。それは投資用中古マンションとなる物件で、アッパーミドルクラスに向けたシンプル&モダンな住まいに再構築するプロジェクトでした。投資用なのでリノベーション費用を全体的に抑えないといけない制約があり、通常HIGH ENDで使っている仕様が使えず、クロスひとつにしても一般ランクの資材から選ばないといけないという…。そんな制約があったにもかかわらず、ラグジュアリーな佇まいと上質な住空間を実現できました。この成功体験が、NEWTRALを始める上で手応えと自信になりました。
小田原:そうだね。アッパーミドルクラス向けの販売価格帯でHIGH ENDの世界観を表現できると確信し、これがNEWTRALの構想の背中を押してくれましたね。
今までのプロジェクトがゼロから創造するアーティスト的な住まいだとしたら、NEWTRALは価格明瞭でステップや完成形が明確な規格型というプロダクト寄りの住まい。わかりやすくアパレルブランドに例えると、メゾン マルジェラがHIGH ENDで、MM6がNEWTRALみたいな。
― シンプルであること。美しくあること。
小田原:例えば、「シンプルさこそが最高の洗練さである」とスティーブ・ジョブズが言っていたように、apple製品も余計なデザインを究極に削ぎ落として機能美を追求していますよね。NEWTRALもそれに通ずる美学を持ちます。デザインを突き詰めるとシンプルになるのは本当だなとつくづく。シンプルに作ろうと今の形になったのではなく、たくさんの試行錯誤や追求を経た結果がシンプルという答えだった。
徳永:ル・コルビュジエのサヴォア邸を見た時も感動したなぁ。とてもシンプルに見えますが、やっぱり原理に沿って突き詰められた建築だから、見た目だけでなく、そこにいると特別な雰囲気を肌で感じられるんです。現地で見た時に、真っ白でシンプルな住宅でありながら重厚感と造形美に深く感動し、納得しました。
光の入り方、美しい陰影、緻密に計算されたシンプルの極み。この建築の哲学はリノベーションにもつながります。動線計画や照明計画はもちろん、同じ白でも色の組み合わせで感じ方が変わるので、緻密な設計で心地よく美しい住まいを表現したいです。
小田原:ここで難しいのが、安直にシンプルに作ればいいというわけでもないところ。一歩間違えると薄っぺらで安っぽく見えてしまうし、美しいシンプルな空間づくりには高度なテクニックが必要。
徳永:僕らの経験が役立つのは、こういうところにもあるよね。さっきの話にも出た、長年HIGH ENDで突き詰めたハイクオリティな家づくりの精神である上質な住空間、心地良さ、デザインセンス、機能美などを価格帯に応じてうまく表現する力。NEWTRALだから実現できる、質の高いアウトプットになっていると自信を持って言えます。
小田原:それこそ、NEWTRALが3つの内装テイスト・3つの天井スタイルに絞り込んだのも、HIGH ENDで積み重ねてきた最適解の選択肢です。そして、僕らが得意とする家具やアート、グリーン、ライティングなども含む空間コーディネートで付加価値をつけていこうと考えました。
足りない機能は、後からでも比較的容易に加えることができますが、一度つくった住空間から何かを引くのは大掛かりな工事になり、費用もかかります。最初から装飾をつけすぎると、後から自分自身を苦しめることになっちゃうんです。だからシンプルな箱にして、生活や好みの変化に合わせて足しながら変化させられる住まいがいい。
― 緻密に設計された住空間が居心地に寄与する。
徳永:内装のプロとして、機能美や緻密な創意工夫を備えた“NEWTRALらしさ”を加えていきたいと思いました。ちょっとしたことですが、廊下の幅や収納の位置など、ディテールにも意図や設計力、空間美の思考を注ぎたい。きちんと考えられた「シンプル」にこそ、空間が醸し出す品の良さや居心地を体感できるものだから。
小田原:メインのスペースだけでなくさりげない一角にも配慮し、小さなストレスや窮屈さをなくすことも、心地よい空間づくりに大切なこと。
徳永:例えば、リビングを10cm広くするのと、廊下の幅を10cm広くするならどちらを選びますか?と尋ねると、大半の人がリビングを少しでも広くしたいと言うけれど、わずか数センチでも廊下を広くする方が住み心地のゆとりが大きく感じられるはず。そういう建築理論や美学へのこだわりをNEWTRALにも落とし込んでいきます。
小田原:リノベーションとなるとケースバイケースの要素が多いので、お客様とのヒアリングを綿密に行い、NEWTRALならではの最適な提案をしていきたいです。ライフパフォーマンスをはじめ、ライフスタイルや好みの変化に対応するシンプルなNEWTRALの住まいをぜひ、スタイリッシュですっきりと洗練されたものが好きな人に見ていただきたいと思います。この美学や価値観に共感してくれる人が一人でも多くいてくれたら嬉しいですね。
― “ゆとり”と“くつろぎ”のある住まいを、多くの人に提供したい。
小田原:僕が長年書き溜めているアイデアノートにある「“ゆとり”と“くつろぎ”のある住まい」は会社のスローガンのひとつ。豊かな暮らしは誰にでも手に入れられるものであるべきで、それを住居で表現しながらゆとりのある豊かな暮らしをもっと多くの人に提供していきたい。そういう思いが募り、新しい領域としてHIGH ENDの哲学が継承されたセカンドブランド〈NEWTRAL〉を設けました。
徳永:中立的でフラットな意味合いの「NEUTRAL」に、私たちの手によって生まれる新しい価値を組み合わせて〈NEWTRAL〉へ。アッパークラスに支持されてきたHIGH ENDの実績やノウハウを活かし、空間の美しさやクオリティーを保ちながら手が届く価格帯で新しい価値を提供したいと思います。